PENTAX Optio WPi//2007-4-12/Hosted on
Zooomrclick to enlarge新美南吉記念館を訪れた際,新美南吉の「春の電車」という詩が展示されていて,とても感じるものがあった.南吉の生きた土地 知多半島を走る名鉄電車のことを詠ったものだった.この詩を詠めば,菜の花が咲き乱れる半島を遠目に水面がキラキラ光る中,岬へ向かって南に下っていく赤い電車が目に浮かぶ.
そして,そのとき思い出したのが,くるりの「春風」という,これも電車を題材にした曲であった.あとで知ったのだが,ここにも書いたように,この曲の作者岸田繁は,彼が幼い頃,名鉄三河線に乗車したことがあるという.もしかしたら,この歌に出てくるのも,赤い電車かもしれない.
「春の電車」
新美南吉
わが村をとおり、
みなみにゆく電車は、
菜種ばたけや麦の丘をうちすぎ
みぎにひだりにかたぶき、
とくさのふしのごとき
小さなる駅々にとまり、
風呂敷包み持てる女をおろし、
また杖つける老人をのせ、
ある村には子どもら輸がねをまわし、
ある村には祭の笛ながれ、
ついに半島のさきなる終点につくなるべし。
そこには春の海の、一
うれしき色にたたえたらむ、
そこにはいつも、
わがかつて愛したりしおみなおりて、
おろかに心うるわしく、
われを待つならむ。
物よみ、草むしり、
小ささ眼を黒くみはりて待ちてあらむ。
われきょうもみなみにゆく電車に、
我がおもい乗せてやりつれど、
そのおもいとどきたりや。
葉書のごとくとどきたりや
「春風」
くるり/岸田 繁
揺るがない幸せがただ 欲しいのです
僕は貴女にそっとそっといいます
言葉をひとつ ひとつさがして
花の名前をひとつおぼえて
貴女に教えるんです
気づいたら雨が降って どこかへ行って消えてゆき
手を握り確かめ合ったら
眠ってる間 口づけして
少しだけ 灯をともすんです
シロツメ草で編んだネックレスを
ほどけないように ほどけないように
溶けてなくなった氷のように花の名前をひとつ忘れて
あなたを抱くのです
遠く汽車の窓辺からは春風も見えるでしょう
ここで涙が出ないのも幸せのひとつなんです
ほらまた雨が降りそうです
帰り道バスはなぜか動かなくなってしまいました
傘を探してあなたを探して
遠く汽車の窓辺からは春風も見えるでしょう
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