「OJT」とは,”On-the-Job Training”の略称で「職場内教育」と呼ばれ,業務や作業を教育する場合の手法・方法のことです.つまり,業務や作業を教える場合に,その業務に習熟している者(大抵の場合,管理・監督者)が,その業務・作業の手順ややり方,注意する点やコツなどを,実際にその業務を一緒にやりながら(あるいは,やらせながら)教える教育方法を「OJT」と呼びます.この場合,”On-the-job”とは,”現場で実際の仕事をしながら””現場での実務を通して”という意味合いです.
「OJT」に対し,現場を離れて実施する,集合教育や机上教育などを”Off-the-Job Training(Off-JT)”と言います.外部教育機関で行われている教育は,これにあたります.
一般には,「OJT」と「Off-JT」(集合教育)をバランスよく組合わせて,組織での人材育成の環境を構築します.日常業務の実務を修得するために,職場の習熟者がトレイナーとなって「OJT」で教育する一方,それ以外の実務に役立つ知識・技術や理論,あるいは,実務とは関係の薄い他分野の知識を修得するために,集合教育でフォローするといった具合です.つまり,「OJT」と「Off-JT」は補完関係にあります.
人材育成に際しては,各要員にどういった技能・技術を修得して欲しいかという組織のニーズを明確にすることが重要です.そのニーズをベースにして,それを達成するための教育手段として,「OJT」,「Off-JT」を選択するのです.そのようにして,一定期間の教育予定を示した年間教育計画が作成されます.
ここでは,「OJT」という専門用語を使っていますが,日常生活の中で人に何かを教える場合には,誰でも「OJT」で教えたり,教えられたりしています.例えば,パソコンの操作を誰かに教える場合,パソコンの前で一緒に画面を眺めながら,マウスで手順を操作して,”次はこうするんだよ”と説明して教えるはずです.そして,説明した後,教えた者に実際に操作させるかもしれません.この「説明したあとに教えた者にやらせる」というステップは,「OJT」をする上で重要なポイントの一つです.
効率よく,確実に教えるためには,以下の手順で「OJT」を行います.
- (1)
- 教える準備をする
(マニュアルや手順書などを用意) - (2)
- 作業を説明する
- (3)
- 実際にやって見せる
- (4)
- 理解したと判断したら,やらせて見せる
- (5)
- 理解度を確認し,フォロー
(質問をしたり,実際の仕事ぶりで習熟度を確認) - (6)
- (必要に応じ)教育実施内容を記録に残す
この手順の中で重要なステップが(1)(5)(6)です.(1)はこの準備が教育の質や修得具合に直結しますし,充分に(5)をしないと,後になって「そうじゃない.説明したじゃないか」ということになります.そして,(5)では,教える側に,本当に理解したのかを見極める力が必要になります.
あまりにも当たり前に実施されている「OJT」ですが,上手に覚えてもらうためには,準備とフォローが必要なのです.よく言われる文句ですが,「やってみせ,言って聞かせて,させてみて,褒めてやらねば人は育たぬ」ということです.
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