昨年末に名古屋で開催された「写真0年 沖縄」 - 名古屋展(写真はこちら)を観に中京大学名古屋キャンパスまで出掛けた.名古屋キャンパスは名古屋昭和区八事にあり,最寄の駅は地下鉄鶴舞線の八事駅である.
比較的近いということと,その前に三好方面に用事があるということもあって自転車に乗って出掛けた.この日は朝から雲行きが怪しかったが,雨は夜になってからという天気予報を信じての出発だった.しかし,いつも通りというか,こういう場合に限ってというか,天気予報は見事にはずれ,昼前には冷たい雨が強く降り始めて散々な目にあった(このことの詳細は別の記事に譲ることにする).
大学といっても,中京大学名古屋キャンパスは見上げるくらいの高層ビルであるセンタービルがキャンパスの中心となっている.丁度,昼飯時だったので久しぶりに学食でお値打ちなランチを食べたあとに会場に向かった.
展示会はセンタービル内にある「アートギャラリー C・スクエア」で開催されていた.こじんまりとしたスペースに展示されていたのは,比嘉豊光「島クトゥバで語る戦世」(200-2007)「沖縄闘争」(1970-1972),浜昇「沖縄という名」(1972-1988)『VACANT LAND 1989』(写真集),北島敬三「PLACES」(2007)「PORTRAITS」.展示の構成は,写真評論家でもある倉石信乃.
自分にとって沖縄というのは,とても遠くに存在する温暖な土地というイメージしかない.そこには,リゾートというイメージさえ付きまとう.
会社には沖縄出身者が数名いるが,彼らと接していても沖縄というものが感じられたという経験はなく,それゆえ特別な土地だという印象はない.また,親父からは,パスポートを持って行ったという昔話を聞かされるが,ピンとこないあり様である.
もちろん,頭では沖縄戦のことも,沖縄がアメリカに接収されていたことも,そのあとの返還に至る経緯も知識としては知ってはいるのだが,どれも後付けのものでしかなく,そういう意味では,広島や長崎となんら変わるところはない.なんといったらいいか,痒いところをシャツの上から掻くようなもどかしさがある.
そうしたもどかしさが今回の写真展でどこか変わったかと言うと,残念ながら違う.沖縄や沖縄の歴史を生きてきた人々を写した比嘉豊光の写真からは,生の沖縄がその独特の熱気を持って,匂いたつように感じられ,それに対し,浜昇「沖縄という名」や北島敬三「PLACES」からは争いとは距離を置いた比較的穏やかな印象の沖縄の空気を感じることができた.
しかしながら,もどかしさは相変わらず残ったままであるし,逆に痒みが増したような気さえする.それは,沖縄の昔のイメージを引きずり出すかのような比嘉豊光の「島クトゥバで語る戦世」に対し,特定のモデルを長年にわたって写した写真群である北島敬三の「PORTRAITS」があたかも対比するように並べられていたことに無関係ではない.
展示構成の倉石信乃は,冒頭の説明でその試みについて以下のように述べている.
新たに北島敬三の連作「PORTRAITS」を出品することにより、名古屋展全体の中で、人間を表象すること、あるいは人間の生と死を表象する写真の営みについても考察を深めたいと考えました。北島の連作「PORTRAITS」、また展示作品の一部として閲覧に供される浜昇による新刊写真集『VACANT LAND 1989』は、いずれも直接には沖縄を撮影した写真ではありませんが、そこに内包される問題意識は「写真0年沖縄」展と深い絆で結ばれたものです。
ただし,「PORTRAITS」に映っている人々は沖縄とは全く関係ないばかりか,「島クトゥバで語る戦世」の中のおじいやおばあたちに比べて,その存在はあまりにも唐突で,そのまなざしの向かう方向が全く違って感じた.どちらも時間の残酷さというものをその写真の中に刻んでいて,そのあたりを意図しての展示だったのだろう.ただし,”問題意識の繋がり”というのは理解できるが,実際に写真を見た後では,それはどうしても料理人の食材に対するウンチクにしか聞こえなかった.バブル期の東京の空き地を撮影した浜昇写真集『VACANT LAND 1989』の展示もしかり.
沖縄はつねに私たちのまなざしを柔和に抱懐すると同時に、厳しく問いただします。その振幅の度合いにおいて沖縄は、比類なき写真の「磁場」でありつづけています。
と,倉石信乃は言う.確かにそうなのだろうが,自分にとってその沖縄はあまりにも遠く,忘却の彼方にあり,リアリティを持って感じることもままならないことも確かなのである.
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- 写真0年 沖縄(公式ブログ)
- FIATMODES(倉石信乃のブログ)
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