前回書いたように,今回はUIを絡めたINFOBAR2の操作性について気になるところをレポートしてみたい.前回も書いたように,前機種INFOBAR(初号機)との比較の中で感じた違いについてあげてみる.他の機種については,全く知らないので,auの他の機種にも言えることもあるだろうし,INFOBAR2特有のものもあるかもしれないが,今回はそこまでは踏み込まない.
さて具体的な指摘に移る前に,デザイナーおよび企画担当者の言葉を拾ってみる.
ボディデザインだけでなく、ユーザーインタフェースにもこだわったと話すのはデザインを手がけた深澤氏だ。動画やFlashなどを使った動くメニューがトレンドと言われる中、情報がはっきり伝わることを中心に考え、あえて分かりやすい操作に徹したメニューをデザインしたという。アイコンは、普段の表示はシンプルなラインを基調とし、カーソルを合わせるとリアルな表示に変化する仕様だ。「遊びを排除し、機能に徹したメニュー。操作の思考に逆らわないような誘導を目指した」(深澤氏)
プロダクトデザインだけの時代は終わりだと思っています。表示デバイスが大きくなれば、プロダクトデザインはそれに反比例して希薄になっていきます。その例がiPhoneということになるかもしれませんが、アップルはもともとインタラクションデザインに長けた会社です。我々は別にiPhoneと同じものを作りたいわけではなく、auとして、日本人ならではの感性で、日本のテクノロジーの中から生まれてくる面白いインタラクションデザインの可能性を探っていきたいと考えています。 砂原氏
ということなのだが,UIや操作性は決して誉められたものではない.それについて具体的に挙げてみよう.なお,重要だと感じたもの,ようするに操作性に大きな影響を感じたものから順番に挙げている.
1. 独立したボタンがない
ケータイ機種変更 #4 | ケータイの操作性に望むこと でINFOBAR(初号機)の側面にeメール切り替え用ボタンがあってとても便利だったと述べたが,INFOBAR(初号機)の側面にはもうひとつの便利なスイッチが付いていたのだが,INFOBAR2になって取り除かれてしまった.それは"キー操作ロック"のON/OFFを切り替える小さなスライドスイッチである.INFOBAR2ではキー操作のロックの機能は,独立スイッチがない代わりに,十字スイッチ中央部の丸いボタンを長押しすることによりON/OFFする仕様になっている.丸まった形状であるINFOBAR2の側面に,INFOBAR(初号機)のスイッチをそのままつけるのは外観上ヤボなのは確かだが,INFOBAR2の曲面形状に合ったものをデザインすることはできたように思う.それほど重要なことではないと思うかもしれないので,この独立したスイッチがないと不便なこと極まりないことを説明する.
ロック機能を操作する場合というのは,通話またはeメールの操作を終え,ポケットやカバンにしまう時である.ポケットやカバンの中での誤操作を防ぐためにロック機能をONにする.ここで問題となるのは,eメールの場合,それも送信した後にしまうケースである.私だけでなく,ケータイ操作がeメール送信で終わるというケースは多いと思う.INFOBAR2の場合,メール送信ボタンを押したあとメール送信が完了するまでその操作(長押し操作)はできない.メール送信処理中は丸いボタンが無効になっているからである.
これに対し,INFOBAR(初号機)の場合は,独立したスライドスイッチがあったため,メール送信処理中でもスライドさせればキー操作を無効にできた.つまりメール送信ボタンを押すと同時に,ロックキーをONにしてポケットにしまうというようなことができたのであるが,それがINFOBAR2ではできなくなってしまった.メール送信にかかる時間は3,4秒といったような些細な時間なのであるが,その数秒の待ち時間が毎回続くので待たされ感は大きい.
さて,INFOBAR2では”ボタンの長押し”でON/OFFを切り替えると書いたが,常日頃からこの”ボタンの長押し”というのもクセモノだと思っている,最近のガジェットでは,例えば,自転車の速度や距離を表示するサイコンでもそうだが,なんでもかんでもこの”長押し”でリセットなりの処理をさせようとする.確かに,押下時間の差を使った機能の使い分けという面では,インプット側の選択肢が二倍になって,その分ハードを簡略化できるメリットは大きいのだろう.しかし,それによって,ユーザー側に煩雑な操作や記憶を要求するばかりか,先ほど述べた時間の無駄も生まれるのを考えるに,もう少し工夫できないものかと思う.最近のガジット類でこの”ボタンの長押し”がさもや正当なんだとばかりに多用されるのを見るにつけ,UIデザイナー側の怠慢すら感じる.例えば,異なった複数のボタンの同時押しや順次押しなんかで工夫できないものだろうか.
2. 操作確認のための二度手間OK押し
これも”ボタンの長押し”の作業をしていて気づいたことである.長押しでキー操作のロックを解除した場合,その操作が完了した証しとして「キー操作 無効 設定されました」と表示される.それはいいのだが,その表示は OK を押さないと消えず(OKは長押ししたボタンをもう一回押す),次の操作を行えないようになっている.OKを押さなくても,6秒間待てばメッセージは自動的に消えるのだが,長押しでキー操作を解除するということは,何か操作をしようとしてるからであり,当然6秒なんて時間は待てないので"OK操作"をすることになる.なお,こういった何かの操作に対する"OK操作"の強要は長押し作業の後にだけあるのではない.例えば,メール送信後も強制される."送信が完了しました"と表示され,"OK操作"を強制される.OKを押さないと長押しによるロックもできない.というように,困ったことに,これはこのケータイのUIの設計思想のようであっちこっちで確認のためにOKボタンを押さなければならない.これをいいようにとれば,この操作の意味は,不用意なボタン操作による予期せぬ誤操作を防止するためのある種のフールプルーフ(製造業ではこれをポカヨケと呼ぶ)だと思うが,何のために長押しさせているのかを考えれば明らかなように,全く余分な作業であり馬鹿げている.もし予期せぬ誤操作で長押しされるという不安があるなら,長押し以外に別の方法を用意すべきだったはずだ.そのために,ユーザーに確認させるなんてのは設計者としては賢い選択とは言えない.もっと極端に言えば,誤操作確率なんてものは起こる確率は大きくないのだから(カバンやポケットの中で何がに押されてしまって長押しされるという機会がどれほどあるというのだ),別に誤操作してもらっても構わないではないか.さらに言うと,INFOBAR(初号機)のスライドスイッチも間違ってスライドしないとは限らなかったが,OK確認なんてものは強要されられなかったことを考えると,設計思想が矛盾している.
なんといっても,自分のした操作に”OK確認押し”すると馬鹿にされている気分である.それにも増して,この余分な操作を強要されるために普段の操作性が阻害されている.
もしこういったデメリットを自覚した上での設計ならば,これはデザイナーの横暴というものであり,もしこういったデメリットを知らずに見過ごされたのなら,バグ取りの努力が不足していると言わざるおえない.こんなことは一週間も使ってみればすぐ気付くことであり,使って確認したのかと問いたい.
なお,こういうある種バグとも言える致命的な欠点は,組込まれたソフトをあとからアップデートするなり修正できないものだろうか.miniSDカードも使えることだし,技術的にはデジカメのソフトウェアアップデートのようにそれほど難しいものではないと思われるが,それができないのもまた由々しき問題である.
3. 表示LED機能不全と画面確認のしずらさ
使い始めて最初に戸惑ったのはこれである.なんとなれば,ケータイから離れている時に電話がかかってきたとか,留守電があったとか,メールを受信したとかが確認しづらいのである.
まずはおそらくどのケータイもついているであろうボディの上部側面に設けられたLEDランプについて.これは画面を見なくても,状態を確認できるためについているものと思われるのだが,INFOBAR2では点灯の仕方にバグがある.これが点灯・点滅するのは,おもに電話がかかってきた場合やeメールを受信した時なのであるが,INFOBAR2とINFOBAR(初号機)では異なっている.INFOBAR(初号機)では,電話がかかってきて出られなかった場合やeメールを受信した場合には,LEDは点滅したのであるが,INFOBAR2では,電話がかかっている最中やeメール受信の最中だけにしか点灯しないのである.つまり,eメールの場合は,受信している数秒だけしか点灯せず,そんな短い時間だけ点灯させるのでは意味がない.何のためについているかを考えれば,その動作中だけに点灯させるだけでなく,そのあとも点灯させ続けないと片手落ちだということは自明である.というより,動作中に点灯しなくても,その後だけに点灯してくれてもよいくらいだ.これは,2項同様,実機での確認ができていないことの証左に他ならない.
留守時の電話やメール受信がLEDでわからないとすれば,どう確認するのか? 画面を直接見るしかないが,これにも疑問がある.通常ある一定時間を経過するとバックライトは消え,画面は真っ暗になる.その状態で画面を確認するためには,画面を再点灯させる必要があるのだが,キーロック有効時にはこれがまたやりづらいのだ.キーロック有効時に画面を再点灯させるボタンは,INFOBAR(初号機)の場合はどのキーでもよかったのに,INFOBAR2では電源ON/OFFボタンだけになってしまった.INFOBAR(初号機)では2,3本の指の指先でボタン面を適当に押せばよかったのであるが,INFOBAR2では電源OFFボタンを狙って押す必要がある.やってみるとわかるが,この差は結構大きい.特に,暗いところでは苦労する.この場合,キー操作を無効にした状態なのだから画面点灯という操作に一つのボタンだけをあてがうという考えが理解できない.
4. 画面の反応が鈍い
これは3項に関連しているが,画面OFFの状態から点灯するまでのタイムラグがINFOBAR2になって長く感じられるようになった.ボタンを押してから画面が立ちあがるまで少し間があるのだ.これはINFOBAR2で採用された有機ELと関係するのだろうか.
5. 重複した機能による混乱
これは機能上の問題であるが,メールやブライジングに複数の方法が用意され,それが操作をとても分かり辛く,煩雑なものにしている.例えば,インターネットをブライジングしようとするのに,今までもあったezwebと,新しく追加されたPCサイトビューアーというものがある.前者はezwebサイト用であり,後者はoperaによるパソコン用サイト閲覧のためのである.
もちろん選択肢が増えることそのものは歓迎すべきことであり,問題なのは二つあることではない.問題なのは,二つあることをUI的にうまく処理できていないことである.前者は十字ボタンの右横下に専用のボタンがありそれを押すことからはじめるのだが,後者はメニュー画面のアイコンをクリックして操作を開始するといったようにである.最初はそれら二つにどういう違いがあるのかがうまく理解できず,こんがらがっていた.頭では理解出来てても指がついていかない感じ.操作の名前をもっとわかりやすいものにして,UI的にもう少し工夫すれば,混乱はなかったように思う.今では慣れてきたが,それでも分かれていることには違和感を感じる.
6. OPERAによるPCサイトのブラウジング
これは今回唯一誉めること.それは上にも書いたが,PCサイトビューアーという機能である.INFOPBAR2には,PC用ブラウザとして定評のあるoperaのケータイ版が搭載されており,それを使ってPCのサイトを閲覧できる.長時間PCを離れる時や時間が空いた時に,tumblrやgoogle mailなんかにアクセスするのに重宝している.サイトや受信状態によって動作が重い時があるのが玉にキズであるが,元々ケータイサイトは見ないし,これがあればezwebを使う回数は激減するだろう.('08-2-26追記)使い始めた当初は上記のように感じていたのだが,今は少し異なった感想なので追記しておく.operaでPCサイトを閲覧できるのは便利なのだが,通信速度が追いつかずイライラしたり,使い物にならないサイトがある.リンク選択は,画面に表示される矢印を十字キーで動かし,リンクの上で中央のボタンを押して選択するのであるが,矢印を動かす操作の追従性が悪いのである.たとえば,tumblr.のdashboardでは,十字キーを操作してから矢印が動くまで4,5秒も遅れるのでうまくリンクの上で止められない.ということで,ezwebは手放せない状態である.
さて,INFOBAR2とは直接関係ないが,ついでにケータイに望む機能を挙げておきたい('08-2-26追記 下記の追記に記述したように,INFOBAR2では可能).それは,通話中にeメールなり,メモを見れる機能である.誰かと話している最中に,eメールやメモ帳に書かれていた情報を伝えたい場合がある.もちろん,後からメールで送れば済むものもあるが,その場で伝えたいときがある.そんな時には,一旦電話を切って内容を紙に書き写してから再度電話を掛け,その紙を見ながら話すという非常に本末転倒的でまどろっこしいことをしているのではないだろうか.これは両手がふさがっている時に,何が別のものを獲りたいというのと似ているかな.要するにマルチタスクじゃないということ.人間の手は増やすことはできないので仕方ないが,ケータイの場合は,通話を切ることなく,並列に作業するということ機能を限定して実現可能できないものだろうか.
('08-2-26追記)上記で記述した通話をそのままの状態でeメールを閲覧することですが,試しに時報でやってみたらできてしまいました.昔から出来たのかわかりませんが訂正しておきます.
悪いところや劣るところというのは,以外に気付き易く,それゆえ過大に評価してしまうものであるというのはわかっている.だがしかし,今回述べたことはそれだけではなく,INFOBAR2とINFOBARのを冷静に比べてみた結果でもある.残念ながら,最初に挙げたデザイナーや担当者の言葉とはウラハラに,操作性という面で進化したとは到底思えないというのが,現時点での結論である.
繰り返しになってしまうが,バグ取りの努力,つまり実機での確認作業が不足していると思う部分が多々見うけられる.少しでも使ってみればすぐ気付くことが潰しこまれていない.場当たり的にやられてはいないだろうか.もう少し確認手順を標準化してモレのない検証作業を望みたいものだ.それはよく使う操作,例えばメールを送信するなど,について実際に操作手順とそれに伴う画面の遷移が妥当かどうか見ればいいだけのことだ.他機種の操作内容やクリック回数などをベンチマークするとなおよい.
なお,INFOBAR2の操作勝手の悪さがこれだけあるのがわかった今,auには是非とも2&3項のバグ取りのためのソフト・アップデートを期待したい.
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しばらくパソコンにじっくり向かえる時間が無かったのですが、やっと余裕が出てきました。
infobar2買ったんですね!いいなあ〜。と思ったら・・・意外に辛口コメント。
ケータイの操作性、重要ですよね。
個人的には、ボタンの押しやすさも重要だと思っています。infobar2はボタンが大きいので、ボタンは押しやすそうですね。
実は機種変更可能な時期に来ているので、色々と物色しており、infobar2も良いかなと考えていたのですが・・・。考え直します。
さてそろそろ春ですね。
また機会がったらツーリング一緒にお願いします!
では。
寒い毎日が続きますね.イー・モバイルの方はいかがですか?ついこの前,ASUSのeeePCという廉価モバイルPCがイー・モバイルの契約で3万円台という記事を読んで買いたい欲求を抑えるのに大変でした(笑)
ケータイは帯に短し,たすきに長しの状態が続いてますね.
「基本設定−音/バイブ/ランプ−お知らせランプ」
から設定すれば、不在着信やメール未確認をLED表示してくれるようです。
早速設定をしてみたら,eメール着信後にもLEDが点滅するようになりました.設定は一通り見たつもりだったのですが,漏れていたようです.恥ずかしい限りです.貴重なご指摘ありがとうございました.なお,記事本文も訂正しておきました.