:: 自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #4 | "share the road"(道路空間の適正配分)の大原則



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自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #1
自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #2 | 序論
自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #3 | 優先されるべきもの:歩行者>自転車>自動車
自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #4 | "share the road"(道路空間の適正配分)の大原則
自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #5 | 自動車 vs 自転車という対立構図からの脱却
自転車車道締め出し大賛成さんへの回答 #6 | 自転車側の問題点

2. "share the road"(道路空間の適正配分)の大原則

自転車車道締め出し大賛成さんは「自転車は歩道を走った方が安全だと思います」「自転車は歩行者へのマナーを守って歩道を走るようにする方が安全だし、迷惑をかけないと思います」と書かれているが,ここからは,あたかも車道は自動車のものであり,自転車は歩道を走ればいいと短絡的な考えが伺える.といっても,長らく,交通行政を司る警察自体がそれを容認し,それどころか,歩道走行を指導し,自らも白チャリをも歩道走行を率先してきたのだから,世間一般に「自転車は歩道を走るもの」という考えが浸透していても仕方ない面がある.

しかしながら,「自転車は車道をという誤った法律がありますが」と自転車車道締め出し大賛成さんもご存知なように,自転車を含めた軽車両は原則的に車道走行が法律に定められている.なお,軽車両は走行が許可された歩道を走行可能であるが,このことと車道を走行の可否は無関係である.自転車が走行を許可されていない車道は,高速道路や国道などの自動車専用道路あるいは自転車走行が標識で禁止された道路だけであり,それ以外の道路は,法律上,走行できることになっている.このことにおいて,自転車乗りに非は一切ないし,法律を変える権利も持っていない自転車乗りに走るなというのは,筋違いであり,理不尽ではないか.法律や運用が誤っていると思われるのであれば,役所や警察に訴えるのが筋だろう.

そうは言っても,自転車が路肩の狭い道路を走るのは,自動車からのプレッシャーで緊張を余儀なくされ,場面によっては危機感を感じることも事実である.そんな状況では,自転車で歩道を走る者も出てくるのも仕方ないことであるし,自転車車道締め出し大賛成さんが,”危険だから,自転車は歩道を走れ”と忠告されるのももっともな話である.現に,私個人も路肩の狭い道路はなるたけ避けるようにしているし,通勤ではクルマの少ない道路を繋いでいる.だがこれは,したくてしてる訳でなく,仕方なくしていることなのである.

よく考えてもらいたい.自転車乗りたちは,車道を走れば,クルマから邪魔だと言われ,歩道を走れば,歩行者に疎まれるという甚だ中途半端な状況の中でペダルを回し続けている.この状況は,自転車は車道を走ればいい,いや歩道を走るべきだ,ということだけで解決できる問題でない.車道と歩道を含めた交通空間は誰のためのものなのか?ということに立ち返って考える必要があるのではないか.それが,"share the road"(道路空間の適正配分)という本来従うべき大原則なのである.

"share the road"とは,単純に道路空間を使用する者で共有する(=share)ということである.具体的には,使用者とは,主に,歩行者,自転車,自動車の三者を指し,それぞれが独立して歩行および走行できるように空間を配分するということである.言うまでもないが,独立して区分するのは,それぞれの走行区分での力関係を極力少なくすることで,起こりうる事故も少なくなり,歩行者・自転車・自動車それぞれが,安全かつ快適に通行できるようにするためだ.

この "share the road"(道路空間の適正配分)の原則に照らすと,日本の道路空間では,自動車と歩行者は,歩道という形で配分できているが,中途半端な立場に置かれた自転車へは,適正な道路空間が配分されていない.これまでにも触れたように,長らく自動車優先の立場でやってきた日本の道路行政において,この原則は不公平に歪んだものとなってしまっているのである.自転車車道締め出し大賛成さんが挙げた今回の問題の根本的な原因は,つまるところここにある.

自転車車道締め出し大賛成さんの指摘された自転車と自動車の間の事故も自転車に適切な走行空間が与えられていないことによるものだし(自転車の無謀運転など乗り手にも問題はあるが,それについては後の記事で述べる),一方,社会問題にもなっている歩行者と自転車の歩道での事故もまたしかりなのである.つまり,自転車と自動車(オートバイも含む)の分離をしてこなかったことで,自転車が法律で認められていない歩道に退避せざる負えない状況になり,それが常態化して歩行者を危険にさらす結果となっている.

さて,先進諸国の中で自転車が歩道を走っている(つまり,歩行者と自転車が同居している)のは,恥ずかしながら日本くらいのものであり,西欧諸国から来た人にとっては,それは非常に納得しがたいことらしい.お茶妖精:外国人が語る「日本に住んで変わったこと」には,いろいろな意見に混じって

「この国では自転車が歩道を通るけど、これはまったく馬鹿げてる。こんなことをやってる国は他にないだろう。私が歩道で自転車を降りるのは言うまでもない。」

と言う意見が載せられているし,ドイツ人のHeinzさんがMTBで日本を一周した体験記 Japan Yokosoにも,

「僕は日本をサイクリング中、マウンテンバイクなるものはまず見たことがなく、「自転車道」ももちろんどこにも無かった」

と書かれている.これらが全てではないにしろ,海外の人の目に,"share the road"でない日本の道路事情が奇異うつっているのは確かである.

この状況を是正する必要があるのは,言うまでもない.歩道は歩行者だけのものであり,自転車とは相容れないということを大前提として,道路空間を道路を利用する歩行者・自転車・自動車それぞれへ適正に配分するという "share the road" の大原則に従って,道路空間を再配分することが求められている.要するに,自転車が走る空間を作るために,歩道や車道を少し分けてもらったり,場所によっては,クルマを一方通行にしたりして,空間を作り出すことが必要なのである.

このことは,交通空間をどうしていくのかという市民生活に直接かかわってくることであり,国がグランドデザインを決め,世論に働きかけるような動きがもっとに活発されていくべきである.これに対し,警察庁や国土交通省は,以下の記事で書いたように,国民に意見を求めるところまでは行っているが,それが具体的な動きに繋がっているとは言い難い.

「道路交通法改正試案」に対するパブリックコメント #1
「道路交通法改正試案」に対するパブリックコメント #2 | my public comment
「道路交通法改正試案」に対するパブリックコメント #3
国土交通省道路局が「道路整備の中期計画の作成に向けてのアンケート」を実施中
どちらかというと,グランドデザインも示せないまま,国土交通省,地方自治体,警察の動きもバラバラで統一できていないのが実情である.

その中にあって,道路空間を利用する者が"share the road" をよくわきまえ,国などに働きかけていくべきであり,自転車が邪魔とか,自動車が邪魔とか言ってる場合ではないのである.


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Tags: 自転車 車道 道路 share the road 配分 空間
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