平日の午後13:05から17:55まで,NHKラジオ第一で ラジオほっとタイム という番組を毎日オンエアしている.その中の一コーナーに「いきいきホットライン」というのがある.放送時間は17:05〜17:55の50分間.週毎にあらかじめテーマを決め,そのテーマに詳しいゲストを呼び,話を聞きつつ,リスナーからの便りを交えながら番組を進めていくというコーナーである.
なぜこんなことを書いたかというと,その「いきいきホットライン」の今週のテーマが「自転車とどう付き合いますか?」なのだからである.そして,この話題について呼ばれたゲストの顔ぶれはというと,以下の通り.
「どこを走ったら良いですか?」日本自転車普及協会 渋谷良二
7/24(TUE)
「普段どう利用していますか?」 元祖ツーキニスト 疋田智
7/25(WED)
「健康に良いですか?」名古屋市立大学大学院准教授 高石鉄雄
7/26(THU)
「町の邪魔モノですか?」九州東海大学教授 渡辺千賀恵
7/27(FRI)
「守ってますか?交通のマナー」NPO法人自転車活用推進研究会代表 小林成基
ゲストの顔ぶれからして,自転車肯定のスタンスでの番組作りということが読み取れる.自転車に乗ってない,そして,自転車に無知なリスナーに正確な知識・事実が伝えられ,自転車の素晴らしさを伝えるいい機会となるはずである.
水曜日の名市大の高石教授の話は,自転車に関するバイオメカニックスな話がきけて目から鱗であった.3%の坂道を歩くよりも,自転車に乗るほうが3倍エネルギーを使うとか,ペダルを高回転で回した方が動力伝達効率が悪い(素人の場合と思われる)など,今まで自分が知りたかった理論的に裏付けのある話をいろいろ聴けたのは嬉しかった.なお,この水曜日には,これまた自転車乗りの間では有名な名古屋市出身のSF作家 高千穂遥も電話で乱入していた.
疋田氏がゲストだった火曜日であるが,はじめて聞く疋田氏の声に戸惑いを覚えつつも(渋い低い声だった),いつもの疋田節が炸裂していて思わずニヤリ.口調はあくまで優しい物腰で,「わたしゃあ害はありませんよ」なのだが(口角泡を飛ばすといったのを少し予想していたが,すっかり肩透かし),エコや健康という観点からの自転車に乗る効用は勿論,その文化的や娯楽的な側面,そして外国の事情などを引き合いに出した自転車の置かれた立場や歩道走行のこと,硬軟の視点を交えながらの充実した50分だった.「自転車は車道を走ることになっている」とはっきり言えたのはよかった.
その中で印象に残っているのは,東京では駅を中心とした移動になって,それは点での移動になっているが,自転車での移動は,それが線になり,面になるという話(それだから,寄り道もしたくなる).そして,自転車に乗っていると花など自然,,暑い寒いの季節感,そして,匂い(川がドブ臭かったり,潮の匂いがしたり)を感じることができるということであった.
外界での季節の移り変わりや気候の変化,寒暖,風の強弱,生き物たちなど,自転車に乗っていれば,どうしたってこれらを感じることになる.ただし,普段外を出歩かなくなった現代人にとっては,感じる機会はどんどん少なくなっている.
昨日の自転車通勤のことである.天気は曇りで気温は暑くもなく寒くもなかった.この季節のいつも通りの気候と言えば,それまでである.いつものように走って会社に着くと,汗の量が半端でなかった.よく晴れ,気温のあがったその前日や前々日と比較しても,あきらかに多い汗でシャツが濡れていた.この日の朝がたぶん今年の中では最も蒸し暑い朝だったわけだが,こういう些細な変化は,普通に生活していたら気付くことのできないことである.少しくらい蒸し暑くても,今日も暑いなあと思うだけだろうし,エアコンのスウィッチを入れたら最後,いつもの暑い日の繰り返しになるだけ.
それが自転車に乗っていれば,今日も暑いと思うだけではなく,今日はとびきり暑いなあとか,今年一番の暑さだなあと,着実に近づく夏に気付くことができる.これって,昔から自然感を大事にしてきた日本人にとって,素敵なことと思うことじゃないだろうか.
自転車に乗ればすぐに出会える.ささやかだけれど,素敵なこと.
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最近、自転車専用道の設置を進めるというニュースを聴きました。
しかし、既に歩道の中に自転車専用通行帯があるところでも違法駐輪や自動車が停められたりして、その意味をなしていないところをよく見かけます。
ハードだけ造っても、しっかり啓発をしないとダメだなあ…と感ずるこの頃です。
少しずつでも歩行者、自転車、クルマ…みんなが使いやすい道路ができてほしいですね。
…ところで、ツール、大変なことになつてますね…
いい番組ですね。いつか日本に自転車が安全に車道を走れる日が来るのでしょうかね。長らく自動車優先でやって来たこの国の道路行政が本当に変わるためには「思想」が必要なんだと思います。
先週、たしか千葉で高校の自転車部の若者が二人いっぺんに死亡した事故を思い出しました。路肩に駐車した車に衝突した事故でした。
番組の中でも流れていましたが,自転車の走る道についての指針を国土交通省と警察でまとめている最中のようです.道路利用者全てにとって嬉しい内容であることを祈るばかりです.
おっしゃるように,ソフト面での徹底がなければうまくいきません.特に,歩行者への啓蒙は最も重要で,最も難しいものでしょう.
ツールのことは,次回の記事で書きます.
> 長らく自動車優先でやって来たこの国の道路行政が本当に変わるためには「思想」が必要なんだと思います。
その通りです.限られた道路空間をシェアするという"share the road"の思想が必要ですね.
高校生の話も,日本一周のゴール目前で亡くなったご老人の話も,全て今の道路環境が原因ですし,とても悲しい事故です.ご冥福をお祈りします.
この日の汗のかき具合、確かにいつも以上でしたが、自分はてっきり体調が悪いのかと思ってしまいましたよ・・・おはずかしい(笑)
今回のyanzさんの話、いいですね。特に後半部分、その話自体が素敵じゃないですか。「自転車に乗りたいな」とか「自転車って良いな」とかって思わせる文章力が確実にありますよね・・・yanzさんって。・・・お世辞じゃなくって本心ですよ(笑)
疋田氏といえば、8月4日に名古屋に来るようです。
昨日地下鉄の車内広告に、名駅地下『テルミナ』の
三省堂?だったけのリニューアルイベントで
トークショーに来るみたいです。
ふと辿り着いた方にも自転車にまつわる楽しさを少しでも感じてもらい,ここから自転車に興味を持ってもらえたらいいと思って書いています.だから,tkさんのお言葉は,それが伝わってるのであれば,とても嬉しく感じます.
確かに,体調の違いによって発汗の仕方は違うときはありますよね.飲んだ翌日なんてね(笑),いやーな汗だったりします.
申し訳ない.もうちょっと早くお知らせすればよかったですね.実は,金曜日は聞けなかったのですが,よかったようですね.
でも,歩道は”徐行で時速5.6km”は,一律に考えるのは,どうかと思います.タラタラ走っても10kmですからねえ.もちろん,歩行者が多い場所ならそれくらい徐行すべきでしょうけど,そうでない場所では現実的な数字ではないと思います.
五感はフル活用ですよね.おまけに,脳内にホルモンが分泌されているはずです.
疋田氏来名の件,メルマガに書かれていましたね.行ってみたいですが,どうしようかなあと思案中.料金とるなんて...(笑)