分館の地階で出会った福田美蘭(みらん)の絵.福田美蘭は,以前大原美術館で開催された有隣荘特別公開「有隣荘・福田美蘭・大原美術館」でこの「モネの睡蓮」と「ゴッホをもっとゴッホらしくするために」という作品を発表している.
「ゴッホをもっとゴッホらしくするために」は,日本人がゴッホらしいと感じる色彩と点描を施したもので,大原美術館所蔵「アルピーユへの道」をもとにしている.なんでも,この「アルピーユへの道」は,贋作の疑いの高いということで展示からはずされることが多いというから,それを選んだ意図を考えるととても興味深い.
もう一枚の「モネの睡蓮」は,これも美術館所蔵のモネ「睡蓮」をベースに描かれたもの.大原美術館の敷地内には,モネ邸の池から株分けされたという睡蓮が浮かぶ池があるのだが,その池の様子を描いた,いわゆるサイト・スペシフィック(site specific)な作品となっている.
[左]モネ「睡蓮」(大原美術館WEB展示室より) [右]福田美蘭「モネの睡蓮」(大原美術館名作選より)
右の福田美蘭「モネの睡蓮」を観た時にあることが閃いた.こういうことは,一旦考えつくと往々にしてその衝動に納まりがつかないものなのだが,この絵の通りの写真が撮ってみることを思いついてしまった.
そこでまずは「大原美術館名作選」を購入し(やるからには徹底的にやる),工芸館入口横にひっそりとあった池まで戻り,絵の構図になる場所を探す.表側からは絵のようにならなかったので,もしかしたら想像で描いたのかもと思ったが,工芸館側に回りこみ池のほとりにしゃがみレンズを覗くと絵に近い構図になった.その位置のまま,絵の画角にズームで合わせると,ほぼ同一の構図が現われた.それがトップの写真である.焦点距離は23mmなので35mm換算で丁度35mmくらい.
比べてみるとわかるが,福田美蘭「モネの睡蓮」の池の中の睡蓮は,美術館のそれではなく,モネの作品に合わせて描写されている.そのために,実際には睡蓮に隠れている工芸館の壁のレンガが強調され,いい味を出している.池の水の色にかなり濃い青が使われているが,これは,美術館の池の色がダークになっているのに合わせたのかもしれない.
(追記)スケッチブックを抱えた福田美蘭を想像しながら,焦点距離35mmの画角の意味を考えていた.ふと思いついてあきれた.なんだ,カメラで撮った写真を元に描いたということか(コンパクトデジカメなど一般的なカメラの焦点距離は,ズームしない状態で35mmのものが多い).技術のコモディティ化はこんなところにも及んでいたのだ.なんだか,リバース・エンジニアリングをしてるような気になってきた.
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真偽の程はさておき 十分考えられる作成過程ですよね
↓ルチオ・フォンタナの「空間概念 期待」そのものです
早速調べてみて あ!これだ 記憶の絵に間違いありません
ありがとうございました
福田美蘭自身は若いですが,ネットと無縁の生活を送っているようですので,自身が撮影したかどうかはともかく,写真を使った確率は高いです.
フォンタナのあの破れた絵(?)は印象に残っています.