この季節の風景と言えば,菜の花や桜なのでしょうけど,それらを差し置いて,気に入っているのは,田んぼに広がる緑だったりします.
この地方の田んぼでは,今と違って昔は,田植えの水入れの直前まではレンゲやクローバーなどの雑草がはえているだけでした.そこは,子供たちの恰好の遊び場で,よく泥だらけになって遊んだものです.
それがいつの頃からか,草がはえるようになりました.レンゲなども土を育てるために咲かせていたと聞いたことがあるのですが,この草もそうなのでしょう.そして,この草の正体は小麦なのです.
そんな緑に誘われて,あぜ道に立って辺りを見渡します.何を考える訳でもなく,何も感じる訳でもなく,ただ遠くを見渡します.
西に傾きはじめた陽光を背にして,草の上に人の形をした影が長く伸びます.その分身は,緑の絨毯の上で,こそばゆいくらいに心地よさそうに伸びています.
緑が一面に広がった田園風景に,どこからともなくやってきた風がスゥーと抜けていきます.それに合わせて,サワサワと揺れる草の位置が連続して変わっていき,風の移動を感じることができます.その間だけは,まるでそこに風の路があるかのようにです.


