僕が旅に出る理由は だいたい百個くらいあって
ひとつめは ここじゃどうも息も詰まりそうになった
ふたつめは 今宵の月が僕を誘っていること
みっつめは 車の免許とってもいいかな
なんて思っていること
〜ハイウェイ/くるり/written by 岸田繁
という歌詞を 積乱雲とハイウェイ | Clear-cut clouds and highway に載せたら,可愛らしい哲学者 うめもも☆さん から「旅に出る理由はなんですか?」と尋ねられた.
僕が旅に出る理由.これは,このブログの主題にもかかわる命題.夕景:照明灯が点灯する頃 | light towers in the evening glow の中にも少し書いたけど,書き足らないなあと感じてた.
この命題に関することは,今までも記事の中で書いてきた.いくつか挙げてみると,
北海道への寝台特急の旅 #3(live)
06:25 K駅に到着。閑散としていた岐阜とは違い、既に一日がはじまる躍動感に溢れている。ここで車中2泊3日の長旅が終わった。この旅では移動の醍醐味を堪能できた。まさに、ON THE ROADの旅。これは、飛行機の旅では味わうことのできないものである。人は獲得した速度の分だけ、移動する際の発見や喜びを失っている気がする。最後になったが、長い間、実況におつきあい、ありがとう。
北海道への寝台特急の旅 #18
下のベッドの年配の男性と話す。
東京まで早慶戦を観戦に行くという。春秋には決まって、早慶戦を観に、北斗星で上京するらしい。
なんと、贅沢で素敵な趣味であろう。
それにしても、この北斗星に乗車してるのは、年配の方がほとんどだ。
旅の醍醐味は、どこにいったかより、どうやっていったかの道中にあるということがわかるまでには、時間がかかるということか。
北海道への寝台特急の旅 #25
心地よい疲労感が体を包む。この疲れそのものが、今回の移動で体験したものがあるということを示しているのか。
寺山修司は“書を捨てよ、町へ出よう”と言ったが、“書き割りを捨てよ、路上へ出よう”の気分。
夕景:照明灯が点灯する頃 | light towers in the evening glow
僕が旅に出る理由は だいたい百個くらいあって
ひとつめは 夕映えの空が僕を誘っていること
ふたつめは こことは違う風を感じてみたくなった
みっつめは 時刻表と見ると いても立ってもいられなくなること
よっつめは この自転車がどこまでも行けると思わせること
いつつめは 見知らぬ土地で新しい発見をしたくなった
むっつめは 異国の人々の日々の営みを感じたくなった
ななつめは それが自分たちと全くかわらないことを確かめたくなった
やっつめは
・・・以下,百まで続く.
さて,本命題の問いかけには,次のように答える.
旅というは,本来,目的地があって(世界一周旅行のように,通過地点そのものが目的地の場合もある)その目的地(目指す土地と言ってもいい)で時間を過ごすということであるから,”移動”そのものが旅の理由というのは,矛盾しているのかもしれない.”旅に出る理由が移動”という表現が矛盾しているのであれば,”旅”は”移動”の一部と言い換えてもいい.
となれば,先の命題は,”僕が移動する理由は”というように置き換わる.そして,その答えは既に用意されている.
about the title
●移動すること,そして,自転車による移動
移動とは,”位置を変えること.移り動くこと.移り動かすこと.”(三省堂 大辞林より)移動に”どこか辿り着く”といった意味はない.
移動することにより,視点も移動する.移動と共に,たった今目の前に広がる風景が,その刹那,後方に置き去りにされる.そして,これは航空機の旅では味わうことのできないものである.空の旅の場合,中間がすっぽり抜け落ちる.そういう意味では,人は獲得した速度の分だけ,移動する際の発見や喜びを失っている気がする.
そして,自転車による移動である.
列車や自動車での移動とは違う移動がここには存在する.移動速度は及ぶべくもない.ただし,これは前述した連続性が最も優れていることを意味する.
「ぼくらはみな喜んだ.ぼくらは混乱とナンセンスを後にして,われわれに与えられた唯一のそして高尚な時代の任務,つまり,動くこと,を遂行しているのだと実感したからだ.そしてわれわれは動いた!」
(Jack Kerouacジャック・ケルアック著「路上」ON THE ROADより引用,”動く”に傍点,chapter2/section6)
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きっと農耕を始める前まではみな移動をしていたはず。
そんな遺伝子がきっと旅に誘うのかもしれませんね。
結局、人類はアフリカから南アメリカの南端まで徒歩で移動したわけで。
ケルアックの「路上」僕も昔読みましたよ(笑。
人は、移動したいという欲求とひとところに安住したいという欲求の両方持ったアンビバレントな生き物ですね(^^) 好奇心だけで移動をする唯一の動物じゃないでしょうか?
まあ、人によって、どっちかが強かったりするのでしょうけど。