Kobenhavnについては,鉄道で到着したせいでDSB(デンマーク鉄道)の列車や看板のデザインに目が行った.Stockholmの色彩豊かなデザインに比べて,黒を基調とした重厚さと落着き,その中にStockholmとは異なった洗練されたデザイン感覚を感じた.ただし,これはDSBの特徴と言った方が正確かもしれない.Kobenhavnの街には,それほどデザインが溢れているという印象は受けなかった.それよりも,街中は至る所にゴミが散乱し,それから目に付く壁には,どこの都会でも見かけるステレオタイプな落書きがされていたことの方が,印象が強い.Helsinki-Stockholm-Kobenhavnと移動してきて,人口が多くなっているというのもあるのだろうが,街並みの統一感のなさ,それが醸し出すある種の乱雑さが増し,それに比例して,街の汚さも目立つようになっていった.
それと反比例するのが,食事の多様さとおいしさである.Kobenhavnでの食事は,ホットドックスタンドのホットドックも,情報もなく入ったホテル近くのレストランでの食事も文句なくうまかった.特に,レストランで食べたGrilled chicken filletsを間に挟んだオープンサンドとムール貝のワイン蒸しには,隊長共々,舌鼓を打った.chickenの味があたかも醤油で下味を付けたかのような香ばしい味で,その上に載ったトマトと表面を火であぶったパプリカの瑞々しさ,そしてそれを包む表面が適度の堅いが,中は柔らかいパン.食べた瞬間に,思わず「うまい」と口に出す味.それからムール貝のワイン蒸し,これはムール貝をココナッツやパインナップル,唐辛子と一緒に白ワインで蒸したものなのだが,塩加減も甘辛さ加減も絶妙でおもわず会話が途絶える程であった.
二日目にKobenhavnの郊外にある Louisiana Museum of Modern Art(ルイジアナ現代美術館)を訪れた.生憎の雨模様だったが,Kobenhavnの郊外,Humlebæk(ハメルヴェク)にある美術館まで Malmö 行きの郊外電車に乗って30分程で到着.この郊外電車は,市内と国際空港を結んでいるものと同じ車両で,先頭と後尾の両側側面に黒いゴムがぐるりと縁取りをした未来的な特徴的あるcoolなデザイン.DSBには,旧型のいかにも無骨な形をした列車も多く運行しており,そのアンバランスさが興味深い.
なお,こちらの列車の多くは(スウェーデンでもそうだった気がする),側面部の中央部が外に張り出しており,日本のように四角ではなく,六角形のような形になっている.これはたぶん,居住空間を増やすためと自転車のためだと思われる.こちらの列車の多くは自転車を乗せられるようになっており,自転車を載せたときに,中央部を膨らませることでハンドルを逃がす役目をする.なお,今回乗った郊外へのゴム頭列車には,両側面に向かい合せに座る車両が用意されており(通常の進行方向に向かう,二人掛けだけの車両も別にある),その車両では,一脚一脚分かれた座席のいくつかを跳ね上げ,進行方向に水平に壁に自転車を固定するようになっており,固定用ベルトも用意されていた.
Kobenhavn 近郊での電車の運賃制度はゾーン制になっている.そのゾーン内では,エストーと呼ばれる赤の電車が走っており,地域をいくつかのゾーンに区切り,乗車区間が何ゾーン跨ぐかによって料金が決められている.料金の支払い方法は,プラットホームに設置されている券売機で切符を買うか,もしくは,予め購入した回数券をプラットホームに設置された黄色の打刻機に挿入して有効にするかのどちらかである.この方式は他のヨーロッパの人たちも理解し難しいらしく,美術館からの帰りのホームでは,隊長が券売機の前で戸惑っていたフランス人のおばさん二人に呼び止められ,切符の買い方を教えるということも起きた(大事な場面をトイレに行っており,見逃した).ただし,美術館のある Humlebæk はゾーン外になり,エスコーでは行けない.国際空港に行くのと同じ路線の郊外行きの列車に乗ることになる.ゾーン制は適用されず,いくらかかるのかわからなかったので,有効回数がまだ余っていた SCANRAIL PASS で乗車した.行きと帰りと二回同じ路線に乗車したが,両方とも検札はあった.
ルイジアナ美術館は,観るものが多く,予定した二時間では,時間が足りないほどだった.ここの美術館は,海に面して建てられており,回廊式に観覧するようなフロアレイアウトになっている.海に面した部分は,地中を潜るようにできており,反対側からも海を見渡せる.その海を背景にして,青々とした芝生の上に,いくつかの作品(彫刻)が展示されており,見事なレイアウトとしかいいようがない.作品の中で印象に残っているのは,海に面した丘の上の置かれたアレキサンダー・カルダーの真っ黒な彫刻といつものモビール.それから,アルベルト・ジャコメッティの彫刻 "歩く男" が池に面した部屋に展示されていて,そとから差し込む光と細長い彫刻の造る影,彫刻の黒,影の黒,外の水面の黒と芝生の緑とのコントラスト.それはそれは叙情的な感慨を覚えずにはいられなかった.それから,"SLIP IN THE OCEAN"と題された映像作品を集めた展示もおもしろかった.そして,ポール・ケアホルム展.プロトタイプの椅子や彼の構想図,ラフスケッチ,図面が惜しみなく展示され,充実した展示内容だった.その他にも,アンディウォーホールやリキテンシュタインやピカソなど著名な作家の絵画やイサム・ノグチの彫刻などが,これでもかと作品が常設展示されている.今度来ることがあれば,一日かけてゆっくりと観て回りたいものだ.
さて,ルイジアナ美術館に行くために,Humlebæk という郊外の街に出掛けた訳だが,郊外の街の印象は,Kobenhavn のそれとは180度異なる.そこでは,ポツリポツリと一軒家が並び,のどかで緑豊かな風景が広がっていた.市街地にあれだけ溢れていたゴミも見当たらなかった.それから,特筆すべきは,自転車に関するものである.駅から美術館までに対向二車線のよく整備された道路を歩いたのであるが,1km歩く間に,自転車道を走るローディを5,6人見かけた.街ではついぞ見かけなかった本格的なロードレーサーに乗り,ジャージにレーパン姿(もちろんヘルメット着用)の自転車乗りたちが,練習となのかツーリングの途中なのか,ソロや二人で勢いよく走り去って行くのを見た.そして,帰り道,バス停で雨宿りをしていた二人のローディに,思い切って話かけてみた.彼らの自転車は,CervéloとSCHRODERだった."Good bikes"といったら,いかにも「そうだろう」いった満足げな表情で笑みを返してくれ,"May I take pictures of your bikes?" と尋ねたのだが,その必要もなく写真を撮らせてもらえた.
前のエントリーで
Kobenhavnに来て,これを書いている.この街に来て感じた,自転車に纏わること.残念ながら,ここで見かける自転車は Stockholm ほどではない.街行く自転車にロードレーサーは一台も見かけていない.ヘルメットを着用したライダーも稀である.ただ,ラスムッセンと書かれた自動車は見掛けたが...と書いたが,自転車乗りたちは郊外に居たのである.
この文章は,HELSINKI VAANTO国際空港から日本へ向かうFINNAIRの中で書いている.旅とはいつもそういうものであるが,過ぎてみれば,あっという間の13日間であった.北欧とひとまとめに言っても,お互いに歴史的に深い結びつきはあるものの,それぞれ違った国であり,街の雰囲気も話す言葉も食べ物もそれぞれ違っていた.一番感じた違いは,そこに住む人々そのものであった.
今回の旅での登場人物を思い出す限り,書き出してみる.
- Helsinki :
- ホテルのミカ・ハッキネン似の若い兄ちゃん
- アラビア博物館に行く途中で,一緒にバスに乗って目的地まで行ってくれたおばさん(隊長が日本から持っていった菓子と風呂敷を渡したら涙ぐんでいたらしい)
- 自転車レンタルSHOP Greenbike の店員アレックス
- アラビア博物館に行く途中で,一緒にバスに乗って目的地まで行ってくれたおばさん(隊長が日本から持っていった菓子と風呂敷を渡したら涙ぐんでいたらしい)
- Helsinki,Turku,Stockholm :
- Aalto Houseで一緒にツアーを回ったスペインの建築家夫婦.TurkuのChapelで「似ているなあ」と思ったのでこちらから声を掛けたら,向こうも覚えていてくれ,再会.偶然は重なるもので,この夫妻には,Stockholmでも今度は向こうから声を掛けてきてくれた.それも,人ごみの中というオマケ付き.
- Nagoya,Helsinki :
- 日本でチェックインする時に,たまたま後ろに並んでいた男性Sさん.自転車らしき袋を持っていたので声を掛けたのだが,Helsinkiからラップランドにあるロバニエミに行き,そこから自転車でHelsinkiまで1000kmを10日間かけて走ってくるという,なんと羨ましい話を聞かせてもらった.偶然にも帰りの飛行機も同じだったので,搭乗前に武勇伝を聞かせてもらい,盛り上がった.
登場人物という表現は,ご当人たちには失礼な言い方かもしれない.でも,この旅でいつまでも記憶に残るのは,こういう人たちのこと.そういう意味で,あえてこの言葉を使わせてもらう.
さて,北欧と呼ばれる国の中には,今回行けなかったノルウェイやアイスランドがある.そして,今回訪れた国にも,魅力的な場所は他にも沢山ある.今回訪れた場所も含め,いずれ行ける機会がまた持てたらと思いつつ,そして,これらの国で自転車を乗り回す自分を想像しながら,この旅を終えることにする.
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書きたいことはあるのですが,抱えたものがあまりにも多くて記事にできるかどうか.まあ,気長に待ってやってください.
ルイジアナ美術館は素晴らしい場所でした.常設展示品も企画展もそうですが,なんと言っても建物そのものの構造とそれをうまく使った展示品の見せ方が通常の美術館とは違っていました.お勧めします.
お食事もとってもおいしそうです。
フィンランド行ってみたいです。
日本はあまりにも暑すぎで溶けそうです.その上,時差ボケのダブルパンチです.
フィンランドは親切な人が多く,とてもよかったです.シャイなところや我慢強いとこは,日本人に似てるかもしれませんね.でも,食事はそうでもないですよ(^^)
充実した北欧の旅だったようで。羨ましいかぎりです。
僕も去年、一昨年と仕事でドイツに7回行きましたが、あまり旅行ができなかったので、今度はプライベートでのんびりブラブラと行きたいなと思ったりもしてます。北欧もとてもよさそうですね。
あと、食事はおいしいところがいいですね。やっぱり。
ドイツも自転車先進国ですよね.北欧は人ものんびりしていてとてもよかったです.食事は南に行くほどおいしいかったですけど,フィンランドでも探せば,おいしいところもあるのでしょう(^^)
大抵の美術館というのは,その美術館という名前通り,建物そのものに魅力の多いものが多いですよね.今住んでいる愛知県にも,名古屋市立美術館が黒川氏,豊田市美術館が谷口氏でどちらも建物だけでも観とれてしまう佇まいです.ただし,残念ながら,そういう優れた建物を持った美術館はその収蔵作品や企画展にも力を入れられているという場合が多く,そういう場合は,数回行ってはじめて感じることも多々あります.おしゃる通りですよね.
そういう意味では,ルイジアナ美術館は,是非もう一度訪れたい場所になってしまいました,