
『ロスト・イン・トランスレーション』(アメリカ/2003)
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監督はこの作品が2作目に当たるソフィア・コッポラ.舞台は東京.ウイスキーのCM撮影に来日したビル・マーレイ演ずる中年映画俳優ボブと自分探し中の若い女シャーロット(スカーレット・ヨハンソン)が英語の通じない東京で,それぞれ疎外感に苛まれます.そんな二人がホテルで出会い,心通わせ,そして...
タイトルを直訳すると,”通訳で失われたもの”あるいは”通訳で迷子になる”といった感じでしょうか.ウイスキーのCM撮影の時に,全くデタラメな通訳をする日本人女性が出て,観客から失笑を買うことになるのですが,その場面が象徴的です.
主人公を演じるスカーレット・ヨハンソンの関しての記事が,先日,ネットで配信されていました.
最もセクシーな女性にスカーレット・ヨハンソン 男性誌 2006.03.28「ははぁーん,さてはこの記事を見て,エントリーをupしようとしたんだな」なんて絵に描いたようなツッコミは不要です.図に描いた星なので...(笑) 冗談はさておき,『ロスト・イン・トランスレーション』以外には,スカーレット・ヨハンソン出演の作品は,『真珠の耳飾りの少女(2003)』を観ました.どちらの映画も,どちらかというと清楚,キュートといった言葉が似合う女の子でした.それが,世界一セクシーな女優とは,かなり驚きました.
ニューヨーク(AP) 男性誌FHM米国版で毎年恒例の「世界のセクシー女性上位100人」を選ぶ読者投票で、映画「ロスト・イン・トランスレーション」などに出演した女優スカーレット・ヨハンソンが、昨年の9位から首位に急上昇した。
さて,映画に話を戻します.主人公の二人以外に,日本人役として,藤井隆(as マシュー),藤原ヒロシやHiromixなどが出演していますが,あくまでも舞台装置として機能するだけです.
日本人から見れば,ありがちなステレオタイプな日本像・日本人像が描かれていたりしますが,日本・東京を知らない旅行者の視点から見た映像ですので,これでいいのでしょう.もしかしたら,二人の疎外感を表現するために,意図的にそうしたのかもしれません.日本・東京という舞台設定は,この映画の中に非日常の空間を作り出すためのもの.そういう意味では,日本や東京でなくても成立するストーリーではあります.
日頃,日本人以外を”外人”とひと括りにする日本人,そしてその象徴としての東京を,”外人”側から見たらこう写るのかと妙に納得したりします.日本,とりわけ東京というと雑然とした所が強調されがちですが,シティホテルが舞台だったこともあり,終始,透明な空気を感じる映像でした.それが二人の疎外感,”lost”感を見事に醸成していました.ストーリー的には東京でなくてもよかったと書きましたが,その反対に,この映像の透明感というのは,東京だから表現できたと言えます.
エンディングで流されるはっぴいえんどの「風をあつめて」が,現代の東京の映像に妙にマッチしていたのが,印象に残っています.
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この映画って、実は現代版の「東京物語」ですよね。今では日本全国で街や人が画一化してますから、外人でももってこないともう「東京」という場所を客体化できないのだと思います。こういう映画を日本人ではなくて、外人が撮ったということ自体が不思議でたまりません。(それがコッポラの娘というのもたまりませんが、、ちなみに彼女のデビュー作もわりと好きです。。)
ただ、本当の「東京物語」であれば、東京という場所における笠智衆と原節子の立ち位置っていうのが小津の世界観として一番しっくりくるんですけど、それがこの映画では逆転しているところがアメリカらしい(そして現代日本らしい)、彼ら(僕ら)の基本的なイノセンスの構図なのかもしれません。
「東京物語」はかなり前に観たきりなのでうまく思い出せないのですが,確か子供に会いに上京するのでしたよね.ということは,この映画の主人にとっての異国の地とは対比できるかもしれませんねえ.興味深い対比ですね.
立ち位置が逆転というのが今ひとつわかりませんが(招かれざる/招かれるという意味ですかね),S.コッポラがそこまで意図していたとしたら,これからの映画も楽しみになりますね.