今回は,現場にまつわる用語です.
この「現場」という言葉は日本特有のものです.モノづくりにおける日本特有のメンタリティと言い換えてもいいかもしれません.
その証拠に,英語には,これに該当する単語は見当たりません.あえて挙げるのであれば,”Shop Floor”という単語が近いですが,これは「現場」というより「作業場」という意味に近く,”そこで何が行われているか?”ということを便宜的に表したものという気がします.したがって,その中に「現場」という言葉が持つ”重要な場所””唯一無二な場所”というニュアンスは感じません.
さて,モノづくりの現場では,「三現主義」や「三直三現」といった表現が使われます.どちらも,日本のモノづくりを支えてきた「現場主義」から出てきた言葉です.
まず「現場主義」とは,現場に足を運び,現場を自分の目で見,自分の耳で聞き,現物を手にとり,つまりは現場を五感で感じることによって,今まさに現場で何が起こっているのかを把握し,行動しようという考え方です.裏を返せば,現場に立脚しない机上の理論や理屈は役に立たないという訳です.
それに対し,「三現主義」の三現とは,「現地・現物・現認」あるいは「現場・現物・現実」のことです.つまり,「三現主義」とは,「現地・現物・現認」「現場・現物・現実」が重要であるという考え方です.
製造業にとって,製造するモノ(現物)とそれを生み出す場所(現地・現場)がしっかり機能していなくてはよい製品は造れません.そして,その現地(現場)で実際にあった事実を認めることが現認です.「現地」で「現物」を「現認」することが改善の源になり,発生した問題の対策や改善に結びついていくのです.
似たような言葉として,「三直三現」がありますが,これは「直ぐに現場に,直ぐに現物に,直ぐに現認を(現実に)」ということです.
「現場」にまつわるこれらの言葉は,日本の製造業が如何に現場を唯一無二なものと考え,大事にしてきたかということの証でしょう.
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