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優れたメロディメイカーのひとりである岸田を有するバンドであり*1,比較的キャッチーなメロディにも拘らず,その音楽性や姿勢などでコアなファンにも受け入れられているくるり.そのくるりの最新作.
ロンドンとマサチューセッツでのレコーディング.シングル「BIRTHDAY」「Superstar」「赤い電車」「Baby I Love You」の4曲を含む全13曲収録.
良くも悪くも聴きやすい.
飄々として溌剌というのが,全体を通してのベース・トーン.それが狙ったものではなく,自然体から溢れ出ているのを感じる.伝説のロックバンド「はっぴいえんど」を思い浮かばせるのも,このあたりにあるのかもしれない.Coccoとのコラボレーション・バンド”SINGER SONGER”で「ばらいろポップ」という作品を生み出したたことで,今まで持たなかった新たな引出しを手に入れたのであろう.
ただし,歌詞は力を抜きすぎのようだ.一曲目の「Bus To Finsbury」の”I wanna be your rock steady yeah !!”というフレーズや「(It's Only) R'n R Workshop!」などは,The Who に対するオマージュなのかもしれないが,この時代に,あまりにもお気楽に写る.
そういう意味で,本作に,前作「アンテナ」が持っていたRock'n rollの持つ初期衝動のダイナミズムがあまり感じられないことは残念である.あまり背中がゾクゾクしないのである.これはドラマーのクリストファー・マグワイアが抜けたことが少なからず影響しているのかもしれない.ただし,アルバム作りはバンドやメンバーの状態が大きく影響するし,バランスの問題でもある.Elvis Costello がそうであるように,優れたソング・ライターや彼or彼女を擁するバンドは,流れの中での”振れ”や”ゆらぎ”があって当然であり,それがないとつまらないのも事実だからだ.
「Superstar」は淡々とした中にスピード感が感じられる曲であり,「ハイウェイ」や「ロックンロール」の流れを汲む名曲.
初回限定盤にはDVD「QURULI VIDEO CLIPS 2005」が付属.そのDVDには,シングル4曲のPVが収録されている.楽曲の素晴らしさに,映像が全く追いついていない.それどころか,台無しにしている.この中で唯一観れたのはリーダーの岸田が撮った「赤い電車」だけ.他はカラオケレベル.映像センスのある監督に依頼するなどできないのか?もったいない.
- *1
- このことは矢野顕子が太鼓判を押すはず.彼女は,自身稀有なメロディ・メイカーであるが,優れたメロディメイカーを見つけることにも長けている(競演した奥田民生しかり,BOOMの宮沢和史しかり)