
『グランド・フィナーレ』(阿部和重著 講談社 2005年)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
世間では,変態,情けない男,犯罪者,人間失格などと蔑まれ,後ろ指さされるだろう男が主人公.ロリコンの性向が配偶者にばれ,家族や世間から見放されて,離婚.自分の娘と逢うことさえもできない.
前半,後半で物語が大きく異なる.
前半は,離婚に至る経緯を主人公のモノローグによって説明しつつ,無謀にも娘の誕生日に娘を連れ出そうとする描写などで主人公の置かれた情けない立場を描いていく.この間,読み手は主人公の自己正当化する説明にうんざりすることになる.前半は,堕落した主人公を読者に印象付けることに終始している印象を受けるが,これは後半への伏線.
後半に入って,物語が転がりはじめ,独自の世界を展開する.落ちぶれた主人公が故郷の実家に戻って,やる気もなく淡々と生活をする所からはじまる.あるきっかけで,二人の少女が登場し,演技の指導をすることになる.二人の少女の思いつめた様子に,主人公は何かを感じ取り・・・前半の弛緩した空気とは対照的に,後半はピンと張り詰めた印象を与える.鄙びた閉じた世界で物語がひそやかに進行していく.ストイックな描写が読む者を引き込んでいく.このあたりの描写は,村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」での,”図書館側”のシーンを思い出させる.
それにしても「グランド・フィナーレ」というタイトルは,皮肉なのか,はたまた,これから起こることを暗示しているのか?第132回芥川賞受賞作.
